KITAHAMA BASE・ホテル アーサー

老舗ビジネスホテルから、まちに開かれた複合拠点へ

□プロジェクト概要

別府駅から徒歩3分に佇む「ホテルアーサー」は、観光客とビジネス客に長年親しまれてきた老舗ホテルです。コロナ禍をきっかけとした宿泊需要の減少や、設備の老朽化、男性ビジネス客への客層の偏りといった課題がありました。地元・大分県の「大分ベンチャーキャピタル」の支援を受け、補助金を活用しながら、2期に分けてホテル単体から複合的な賑わい拠点へと再構築しました。従来の男性客中心のビジネスホテルから、地元住民や旅行者も集うライフスタイルホテルへとリブランディングされ、収益性が改善しています。弊社は「KITAHAMA BASE・ ホテルアーサー」として生まれ変わる空間再生の設計・監理を担当しました。

  □設計の視点(コンセプト)

エントランスには騎士の甲冑やステンドグラス風の装飾が施され、館内には「シルクロード」をテーマとした装飾文化が残るなど、創業者の趣味性を色濃く残していたこのホテル。その独自性を受け止めつつ、訪れる人々にとって立ち寄りやすく、居心地のよい空間へ編み直ししました。重層的な空間をすべて刷新するのではなく、色彩の整理、照明や動線の再構成、素材の組み替えなど、一定の事業収支の枠組みの中で実行可能な「引き算」的設計方針で再生しました。

  □空間ごとの設計と工夫

暗く閉じた印象だったエントランス空間は、街と宿をつなぐ「顔」としての役割を担うべく改修。街ゆく人もふらりと立ち寄れるように、新設したカフェを前面に配置しました。内装は、2色のニュートラルなグレートーンを基調に、天井・壁・床の濃淡や照度を調整しました。訪れる人が穏やかな期待感を抱くように整えています。

大浴場(一丁目温泉)は、もともと客室だった部分を取り込んで大幅に拡張しました。

女湯は別府の昔ながらの楕円形の浴槽とブルーのタイルを使用したレトロモダンな空間です。別府の共同浴場文化を現代的に昇華し、縁に腰かけて会話や休憩ができるよう設えた、別府では少し新しい“座れる浴槽”です。 (※別府の共同温泉では、縁に座らないのが昔からのローカルルール。)

男湯は、野外テラス付きの岩風呂大浴場。一つだった岩風呂を二つに分け、好みで熱湯とぬる湯を選べるようにしました。男女ともに高温サウナと水風呂もリニューアルしています。

建物最上階(10階)に位置する展望レストランは、空間そのものには大きく手を加えず、レストランへ至るまでの演出を整えました。エレベーターを降りた先の廊下はトーンを落とし、少しずつ光に向かって進みます。扉の先に広がる、別府湾を望む開放的な空間へと誘う体験の設計です。

  □おわりに

本プロジェクトにより、男性のビジネス客中心だったホテルアーサーは、カップルや女性旅行者、地元住民など新たな客層が集う、まちに活気をもたらす複合拠点へと生まれ変わりました。生まれ変わった歴史あるこの建物が、これからの別府の街や人々に新たな物語をひらくことを願っています。

 

  DATA

所在地:大分県別府市北浜

主用途:ホテル

構造・規模:RC造地上6階建、鉄骨造地上10階建

延床面積:3,480.73㎡

竣工:2024年3月

写真:今枝あき(KINOCO PHOTO)

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